人は何を手がかりに物を買うのか

モノやサービスを買うとき、売り手の情報だけで購入を決める人は少ない。

 

いかに腕の立つセールスマンでも、いきなり新しい顧客にモノを売り込むことは難しい。

 

というのも大量の情報にさらされている現代人は、商品やサービスの売り込みに辟易(へきえき)していて、売り手側が提供する情報を、殆ど信じないからだ。

 

じゃあ人は何を手がかりに物を買っているのかというと、世間の「評判」だとか、他人の「クチコミ」である。

 

すでにその商品を使っている人の評判だとか、自分の知り合いから聞いた情報を元に、購入を判断しているのだ。

 

では、どのくらいの人がクチコミを判断基準にしているのかというと、エマニュエル・ローゼン著の「クチコミは、こうして作られる」という本には、こんな調査結果が載っている。

 

サーフィン雑誌のアンケートでは、47%の読者が、サーフィンの道具やスポット情報は、友人からの情報をもっとも重要視するという結果が出た。

 

旅行協会の調査では、43%の人が、旅行先や飛行機、ホテルやレンタカー選びを、友人や親戚の情報を元に選んだと答えた。

 

映画ファンの53%は、見る映画を決める際に、すでにその映画を見た人の感想を重要視すると答えた。

 

医者を捜している人の70%は、他人から得た情報を元に選ぶし、薬を選ぶ際も、女性の65%は家族や友人、同僚などから情報を得るとしている。

 

購入するモノによって4割から7割と幅があるのは、失敗したときに失う価値の大きさが違うからだろう。

 

サーフィンや旅行、映画などは、ガイドブックなどに情報がたくさん載っているし、失敗したとしても楽しみ方はいろいろある。

 

しかし医者探しや薬選びは、失敗すると大変だから、家族や知人から得た情報が重要になるってことだろう。

 

いずれにせよ、家族や友人、知り合いからの情報が、購入や採用に大きな影響力を及ぼしているのは確かだろう。

 

この、家族や友人、知り合いやネットから得る情報のことを、このサイトでは特に「バズ(くちこみ)」と呼ぶことにする。

 


バズ・マーケティングとは良品を売る方法

人々がモノやサービスを買うとき、参考にするのが周囲の人間からのクチコミだ。

 

このクチコミに着目したマーケティングをバズ・マーケティングという。

 

バズ・マーケティングというのは、商品やサービスについてのバズを発生させたり、発生したバズを広めて売り上げを伸ばそうという手法だ。

 

ちなみに「バズ(buzz)」とは「ブザーの音」のことで、元々は「(ハチが)ブンブン言う音」のことだ。

 

この音が転じて「ガヤガヤ言う声」「うわさ話」の意味になり、世間で情報がジワジワ広まっていく様子を表している。

 

また似たようなモノにバイラル・マーケティング(Viral marketing)というのがあるが、バイラルというのは「ウイルス性の」という意味だ。

 

バイラル・マーケティングとは、人々が商品やサービスの良さに感染して、それがどんどん伝染するように広めるというマーケティング法だが、バズ・マーケティングという言葉で充分なのでバズで統一することにする。

 

さてこのバズ・マーケティングの長所は、良いバズが発生すると、派手な宣伝をせずとも売り上げがどんどん伸びることである。

 

すなわち、広告やCMに大金を投じなくとも、人から人へと情報がジワジワと広まっていき、最終的にはヒットにつながるのである。

 

一方、バズ・マーケティングの短所は、人に話したくなるような良い商品・サービスでないと、バズが発生せず、効果が全然出ないことである。

 

元々の商品やサービスが期待を裏切るものであれば、悪いバズが発生して売り上げが減ってしまうのだ。

 

つまりバズ・マーケティングとは、良い商品やサービスを広く世間に知らしめる方法であり、まず良い商品やサービスありきのマーケティングなのである。

 

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