人は何を手がかりに物を買うのか
モノやサービスを買うとき、売り手の情報だけで購入を決める人は少ない。
いかに腕の立つセールスマンでも、いきなり新しい顧客にモノを売り込むことは難しい。
というのも大量の情報にさらされている現代人は、商品やサービスの売り込みに辟易(へきえき)していて、売り手側が提供する情報を、殆ど信じないからだ。
じゃあ人は何を手がかりに物を買っているのかというと、世間の「評判」だとか、他人の「クチコミ」である。
すでにその商品を使っている人の評判だとか、自分の知り合いから聞いた情報を元に、購入を判断しているのだ。
では、どのくらいの人がクチコミを判断基準にしているのかというと、エマニュエル・ローゼン著の「クチコミは、こうして作られる」という本には、こんな調査結果が載っている。
旅行協会の調査では、43%の人が、旅行先や飛行機、ホテルやレンタカー選びを、友人や親戚の情報を元に選んだと答えた。
映画ファンの53%は、見る映画を決める際に、すでにその映画を見た人の感想を重要視すると答えた。
医者を捜している人の70%は、他人から得た情報を元に選ぶし、薬を選ぶ際も、女性の65%は家族や友人、同僚などから情報を得るとしている。
サーフィンや旅行、映画などは、ガイドブックなどに情報がたくさん載っているし、失敗したとしても楽しみ方はいろいろある。
しかし医者探しや薬選びは、失敗すると大変だから、家族や知人から得た情報が重要になるってことだろう。
いずれにせよ、家族や友人、知り合いからの情報が、購入や採用に大きな影響力を及ぼしているのは確かだろう。
この、家族や友人、知り合いやネットから得る情報のことを、このサイトでは特に「バズ(くちこみ)」と呼ぶことにする。
バズ・マーケティングとは良品を売る方法
人々がモノやサービスを買うとき、参考にするのが周囲の人間からのクチコミだ。
このクチコミに着目したマーケティングをバズ・マーケティングという。
バズ・マーケティングというのは、商品やサービスについてのバズを発生させたり、発生したバズを広めて売り上げを伸ばそうという手法だ。
ちなみに「バズ(buzz)」とは「ブザーの音」のことで、元々は「(ハチが)ブンブン言う音」のことだ。
この音が転じて「ガヤガヤ言う声」「うわさ話」の意味になり、世間で情報がジワジワ広まっていく様子を表している。
また似たようなモノにバイラル・マーケティング(Viral marketing)というのがあるが、バイラルというのは「ウイルス性の」という意味だ。
バイラル・マーケティングとは、人々が商品やサービスの良さに感染して、それがどんどん伝染するように広めるというマーケティング法だが、バズ・マーケティングという言葉で充分なのでバズで統一することにする。
さてこのバズ・マーケティングの長所は、良いバズが発生すると、派手な宣伝をせずとも売り上げがどんどん伸びることである。
すなわち、広告やCMに大金を投じなくとも、人から人へと情報がジワジワと広まっていき、最終的にはヒットにつながるのである。
一方、バズ・マーケティングの短所は、人に話したくなるような良い商品・サービスでないと、バズが発生せず、効果が全然出ないことである。
元々の商品やサービスが期待を裏切るものであれば、悪いバズが発生して売り上げが減ってしまうのだ。
つまりバズ・マーケティングとは、良い商品やサービスを広く世間に知らしめる方法であり、まず良い商品やサービスありきのマーケティングなのである。
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