ミルグラムの「スモール・ワールド実験」とは
ネットワーク論で有名なのが、「スモールワールド現象」である。
友達の友達をどんどん図示していくと、ツナガリの線は世界中に広がっていき、巨大ネットワークになることは、想像に難くない。
では世界中に広がるネットワーク上からランダムに2人の人間を選んだとき、片方の知り合いからたどっていくと、もう一方に辿り着くまで何人かかるのだろうか。
これはネットワークの最短距離を求める問題だが、おそらく数十人の知り合いが、間に入る必要があるだろうと考えられていた。
そこで心理学者スタンレー・ミルグラムは、1967年、「スモール・ワールド」と呼ばれる実験を何度も行ってみた。
有名なのは、ネブラスカ州オマハに住む住人160人に手紙を送り、その手紙をマサチューセッツ州ボストンの人物に届くように、心当たりに転送して欲しいと依頼してみた実験だ。
オマハとボストンは、1400マイル(約2250km)離れており、車で22時間弱もかかる距離であるから、充分離れた距離である。
この長い距離をどういう経路を通って、手紙が届けられるのかを実験してみたわけだ。
この実験の詳細をウィキペディア「6次の隔たり」から引用してみると、こうだ。
この顔と名前の人物をご存知でしたらその人の元へこの手紙をお送り下さい。
この人を知らない場合は貴方の住所氏名を書き加えた上で、貴方の友人の中で知っていそうな人にこの手紙を送って下さい」という文面の手紙をそれぞれに送った。
その結果42通 (26.25%) が実際に届き、42通が届くまでに経た人数の平均は5.83人であった。
6人の知り合いをたどれば、世界中の誰にでもつながれる?
心理学者ミルグラムは1967年、「スモール・ワールド」と名付けられたネットワークの実験を何度も行った。
たとえばオマハの住人から160人を選び、2250km離れたボストンに住む、とある人物に、ある手紙を転送して欲しいと依頼してみたのだ。
その結果、160通中42通が目標の人物に届き、届くまでに平均約6人の仲介があったことがわかった。
そこで、世界中の人間の殆どは、6人の知り合いでつながっており、世界は「六次の隔たり(Six Degrees of Separation)」でつながっているという仮説が生まれた。
たとえば知り合いの数を平均44人と仮定すると、44の6乗は世界人口を超える。
これは世界中の誰であっても、6人程度の仲介者を経れば辿り着けるはずだという説だ。
そこで日本でも、北海道に住む、とある人物目指して九州から手紙の転送を依頼するという実験が行われたが、その結果、平均7人の仲介者を経て手紙が届けられたという。
ミルグラムのこのスモールワールド実験では、手紙の到達率が低くて、データ自体はあまり信頼できるようなモノではなかった。
がしかし、平均6人程度の仲介者で遠くに住む人間までたどり着いたという事実には非常に大きなインパクトがあった。
そしてまた、到達経路を調べてみると、特定の人物の手元を経ていることがわかった。
たとえば目的の人物まで到達した42通の半分の21通が、たった3人の人物を経て本人に届けられていた。
これはランダムに選んだオマハの住人が、おのおの思いつく先に転送して届いた手紙の半分が、特定の3人の手元に集まり、目的の人物に届けられていたということだ。
この3人は目的の人物の直接の知り合いであることは明らかだが、目的の人物が属するクラスター内のバズ・ハブであり、知り合いの数がクラスター平均の4~5倍も多い「有名人」なのだろう。
★さらに詳しくは→スモールワールド現象(ウィキペディア)NEXT:文明開化でネットワークが見えなくなった