バズは、実際にはどう広まるのか
SKE48松村香織のケースを例に、バズがどのように広まるかを、おさらいとして、まとめておこう。
まず特定の情報に詳しくて、それをわかりやすく発信する人を「メイヴン」(情報通)と呼ぶ。
メイヴンは気むずかしい専門家と違って、他人の役に立ちたいと思っている人で、わかりやすく情報を伝える人だ。
松村香織は動画をネットに上げてSKE48メンバーを紹介するので、「SKE48メイヴン」(SKE48通)だと考えていいだろう。
そして特定のクラスター内で、クチコミを広める人を「バズ・ハブ」と呼び、クラスター内の情報を別のクラスターに伝える人を「コネクター」と定義する。
バズ・ハブは地域密着型で世話人タイプ、一方の、コネクターは様々なクラスターを行き来する、コスモポリタン(地球市民)のタイプだ。
つまり松村がグーグル・プラスにアップした動画や、散在している松村香織に関係する情報を集めて、同じ「ぐぐたす」内にある松村ファン・コミュニティに、その情報をドンドン書き込んでいくのが「松村香織ファン・クラスター」の「バズ・ハブ」や「(外から情報を持ち込む)コネクター」たちということになる。
バズ・ハブというのは有志のメンバーなので、クラスター内に一人しかいないわけではなく、何人もいるし、コネクターも同様に何人もいるのだ。
このバズ・ハブやコネクター達が気づいた情報をどんどん書き込み、他のメンバーがそれに対してコメントをつけたりして、松村ファンのクラスター内で松村の発信した情報が広まる。
ただしこの段階では、松村の発信した情報は、「ぐぐたす」内の松村コミュニティ内だけで広まるだけで、外部の人間にはほぼ伝わらない。
というのもクラスター外にいる人は、松村香織についても、松村クラスターの最近に話題についても殆ど知らないので、話が広がらず、そこで話が立ち消えになるからだ。
メガ・ハブには、コネクターが集まり、ショートカットができる
情報はクラスター内に閉じ込められ、外部に出ることはなかなかない。
だから通常は何か情報を発信しても、それが外部には広まることはない。
つまり松村香織がいくら動画を上げようと、それがつまらない内容の動画であれば、松村ファンのクラスター内でしか広まらないし、外部の人には伝わらない。
ところが、彼女の発信する話題の中には、外部の人間にも興味を持たれるモノもあって、それがコネクターたちによって外部に伝えられる。
たとえば動画でSKEの他のメンバーを登場させれば、そのメンバーに関心がある人によって動画が転載され、そのファン・コミュニティにもその情報が広がっていく。
また動画でコンサートやイベントの裏側を紹介すれば、そのコンサートやイベントに関心がある人によって動画が転載され、SKE48や48グループのファン・クラスターにその情報が広がっていく。
松村香織の個人的な動画や言動は、松村ファンのクラスター内にしか広まらないが、他のメンバーやグループのイベントに絡んだ動画は、どんどん他のクラスターに転載されて広まっていき、「ぐぐたす」外部のSNSや掲示板に転載されたり、「アイドル・ニュース・サイト」で紹介されて情報が広まっていくわけだ。
これが常態化すると、松村ファンではない人間も、「ぐぐたす」の松村アカウントを自分のサークルに登録し、松村の動画や言動を常に見張りだす。
言わば「松村ウォッチャー」とも言うべき人間が現れてきて、その人々が情報を外部に持ち出すコネクターとなって、クラスター間にショートカット(近道)を作り、松村の発信した情報をすぐに広めはじめたのだ。
事実、松村香織の2013年の総選挙での獲得票数は2万7,566で、松村ファンのコミュニティ参加者は1000人余りしかいないが、彼女の「ぐぐたす」アカウントを自分のサークルに登録している人は、すでに10万人を突破しているから、松村ウォッチャーの数は非常に多い。
何か発言すると、それがすぐに広範囲に広まってしまうような存在を「メガ・ハブ」と呼ぶのだが、松村香織はすでに48グループの「メガ・ハブ」になったと言えるだろう。
だから松村が「選抜総選挙に立候補1番乗り」したり、「終身名誉研究生に就任」と発表されればネットニュースに載るし、「忙しすぎて脱毛がひどくなり、禿げた」といえば、そのニュースがネットを駆け巡ることになるわけだね。
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