バズは伝染病のように広まる
バズやクチコミがどのように広まるかというと、伝染病が広がるように広まると思えば良い。
バズ・マーケティングのことを、バイラル・マーケティングと呼ぶこともあるが、これはウイルスのように(バイラル)、広まっていくところから名付けられている。
では伝染病がどのように広がるかを見てみると、まず世界のどこかで新しい伝染病が発生する。
たとえば中国の奥地のムラで発生したり、アフリカや南米のどこかのムラで発生し、その周辺地域へ徐々に伝染が広まっていく。
最初は小さなムラで新しい伝染病が発生して、そのムラの中だけで流行ったあと、ムラに出入りする人間に感染して外の世界に広がっていく。
あるいは外界との交流がないムラで代々伝染していた病気が免疫を持たない外部の人間に伝染して、そこから大きく広がっていくと言うケースもある。
どちらにしても、やがて感染は街に広がり都会に広がる。
そうしてさらに旅客機がそれを他の地域や国に運ぶ。
パンデミック(世界的感染)は、そうして起こるわけだ。
伝染病の場合はこうして、1つのムラから感染が始まるのだが、バズの場合は、1つのクラスターから始まるとは限らない。
新しい伝染病が生まれるのは一つの地域だが、バズは、複数のクラスターから同時多発的に起こる事も多い。
たとえばジワジワ売れてベストセラーになった本は、その良さが家庭内で語られ、友人同士で語られ、書店員とお客さんの間で語られて広まっていく。
ベストセラーのバイラル・マーケティング
無名作家の本がベストセラーになるとき、たいてい読者からバズが発生している。
その本を読んだ読者はその本に「感染」し、熱に浮かされたようにその本のすばらしさを周囲の知り合いに語るわけだ。
バズというのは、心が動かされたときに発生しやすい。
本を読んで起こった感動も、その一つである。
本の場合は、読者が興奮したり感動すると、その感情を他人に伝えたくなるので、読んだ人からバズが発生して、ジワジワ広まっていくわけだ。
これが出版社内で起こると、見本を書評家に送ったり、読書好きの有名人に献本して、バズを広めてもらう。
彼らはその本がどういう本か、うまく言葉で表現してくれるので、バズを広める際に非常に役立つのだ。
アメリカの出版社では、ライバルの出版社にまで贈ったケースもあるという。
ライバル会社の出版社には読書好きが多いので、きっとそこからもバズが発生すると考えたのかもしれない。
書評家や本好きの有名人は、一定のファンを持っている。
なので「この人が薦める本は、自分にも良い」と考える人がたくさんいて、薦められた本は必ず読む、あるいは本を探しているときは、必ずこの人の奨めるリストから選ぶという人がいるわけだ。
だからバズが有名タレントなどに伝わり、そのタレントが熱心に語り出したら、爆発的なヒットにつながり、ベストセラーになるわけだ。
また日本では近年、「本屋大賞」なんてものができたが、これもバズを生む仕掛けの一つだろう。
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