AKB48の成功を支えているのは、ロングテール
AKB48が毎回ミリオンヒットを連発できるのは、CD発売記念大握手会(個別握手会)が、毎回数万人ものファンを集めるような、巨大イベントに成長したおかげである。
日時とメンバーを指定できる個別握手会は、姉妹グループが増える度に大規模になり、それがCD売り上げを下支えしているのだ。
だから主要メンバーがドンドン卒業していっても、売り上げが急激に減ると言うことはないだろう。
なぜならAKB48の売り上げは、一部の有名メンバーが支えているのではなく、世間的には知られていないようなメンバーが、自らのファンを増やすべく努力した結果を、積み上げたものだからである。
これはAmazon.comなどの成功ネット企業でよく言われる「ロングテール理論」だ。
つまりメンバー一人一人の売り上げ貢献は小さくとも、NMB48渡辺美優紀やSKE48須田亜香里のように、握手しに来てくれた人に良い印象を残してリピーターを増やし、バズを発生させてファンを増やす努力をするメンバーがいる限り、そう簡単には人気は衰えないのである。
しかしグループが大きくなってメンバーが増えるにつれ、メンバー一人一人に、光を当てるのは難しくなってきた。
ロングテール理論で売り上げを積み上げるには、マイナーなメンバーにも光を当てて、それぞれファンをつかんでもらわねばならない。
だが実際のところ、劇場公演やネット中継だけでは、マイナーメンバーの人気を引き出し、彼女らの知名度を上げるのが難しかったのだ。
そこでAKB48グループが次に始めたのがグーグルの始めたSNS、「グーグル・プラス」(通称:ぐぐたす)への参加だった。
つまり、AKB48グループのメンバーそれぞれに、情報発信できるツールを渡して、自分でファンを獲得できるように計らったのだ。
情報は、発信してみなくちゃわからない
200人を超えるメンバーを抱え、個々のメンバーを売り出すのが難しくなってきたAKB48グループ。
AKBはメンバー一人一人の人気が、CDなどの売り上げを支えているので、マイナーメンバーの知名度アップは、重要なテーマである。
そこで始めたのが、グーグルが新しく始めたSNSであるグーグル・プラス(ぐぐたす)への参加だ。
13歳以上のメンバー全員にスマートフォンを配布し毎日自分で情報発信できる空間を作ったのだ。
そして率先して秋元総合プロデューサーも、毎日夜11時に様々な情報や業務連絡を書き込み、情報発信に努めた。
これに飛びついたのが、AKB48のマイナーメンバーや、SKE48やNMB48、HKT48などの地方グループのメンバーたちだった。
彼女らは積極的に「ぐぐたす」での情報発信に励み、テレビ露出の少なさや、地方で活動しているハンデキャップを埋めようとした。
ここで頭角を現した代表が、SKE48研究生の松村香織だった。
松村香織は、須田亜香里と同じSKE3期生だが、なかなか正規メンバーに昇格できず、行き詰まっていた。
彼女は秋葉原でメイド経験のある異色のメンバーだが、グーグル・プラスにグループ全体で参加すると聞き、これは大きなチャンスだと情報発信に励んだのだ。
そして松村は、どうすれば目立てるかを考え、他のメンバーがやっていないことをやろうと、ビデオカメラを手に入れて、撮影した動画をアップし始めた。
具体的には自分で「BBQ 松村香織の今夜も1コメダ」と称した怪しい動画番組を作り、それを毎週のようにアップしたのだ。
これはお世辞にも番組とは言えないレベルの動画であったが、SKEファンの間でバズが生まれ、徐々に話題になってゆき、ほどなく秋元総合プロデューサーの目にもとまるようになった。
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