自分が情報発信しないと、始まらない

200人を超える大所帯となったAKB48グループ。

 

もはやメンバー一人一人に光を当てて、魅力を引き出すのは不可能になった。

 

というのもテレビに出れる人数には限りがあるし、劇場公演のMCだけでは情報が少なすぎる。

 

各メンバーの握手会人気の積み重ねによって、CDなどの売り上げを伸ばしているAKB48にとってこれは先細りを意味するから大問題だ。

 

そこで始めたのが、グーグルのSNSであるグーグル・プラス(通称:ぐぐたす)に、グループ全体で参加することだった。

 

13歳以上のメンバー全員にスマートフォンを渡し、自分自身で自由に情報発信できる空間を作ったのだ。

 

ここで注目を集めた代表が、SKE48研究生の松村香織だ。

 

松村は他のメンバーと違うことをしようと考え、ビデオカメラを手に入れて、2012年1月下旬に「BBQ 松村香織の今夜も1コメダ」と称した怪しい動画を作り、それを毎週のようにアップしはじめた。

 

「1コメダ動画」は、暗い部屋で自分のことを語ったり、SKEハウス(寮)で同居するメンバーとダラダラと話したり、劇場や稽古場での様子を撮影しただけの動画だった。

 

だがこれが普段ファンが目にできない素顔のメンバーの様子をたくさん映し出していたため、SKEファンの間でバズが発生し、すぐに話題となった。

 

そして松村が「ぐぐたす」にアップロードした記事や動画は、「ぐぐたす」の共有機能を使ってドンドン転載され、グーグル・プラスに集った48ファン・クラスター内で、あっという間に広まったのだ。

 

ファンは自分の興味があるメンバーの情報に飢えていて、握手会以外のメンバーの様子を渇望していたのだ。

 

また秋元総合プロデューサーがスタッフの松村氏に秋葉原のイベント会場を探すように業務連絡したのを、元秋葉のメイドだった自分に当てたものだと勘違いして、情報を調べて返答したところから、スタッフからも「面白いヤツ」と注目され始める。

 

さらには松村がSKEハウス(寮)で作るハヤシライスが美味いと他のメンバーが紹介したために、SKE48カフェのメニューに採用される。

 

「ぐぐたす」を上手く利用しているメンバーとして認められ、グーグルのCM曲「ぐぐたすの空」の歌唱メンバーにも選ばれ、姉妹グループの研究生ながらAKBシングルのカップリング曲を歌う事にもなる。

 

4月下旬には、知名度のない研究生でありながら週刊プレイボーイ誌で連載企画を始めることになる。

 



松ちゃんは、ぐぐたす使ってのし上がる

メンバー一人一人のことを、もっと知ってもらおうとしてグーグル・プラスというSNSに、グループ全体で参加したAKB48。

 

そこで注目を集めたのがSKE48研究生・松村香織で、ほどなく彼女は週刊プレイボーイ誌で「ぐぐたすの輪」という連載を任された。

 

これは「松村香織の今夜も1コメダ」の特別編で毎週1人のSKEメンバーと、約1時間、ぐだぐだとおしゃべりをして、その動画を編集してアップするという企画だった。

 

松村は、ゲストメンバーのスケジュール調整も、動画の撮影も、編集も、アップロードも全て自身で担当し、毎週一人ずつSKE48メンバーをしていった。

 

誌面ではページ3分の1という小さなスペースで、うっかりすると見逃されるような連載だったが、SKEファンの間では、すぐに注目の連載になった。

 

というのもアップロードされる動画には、ファンが今まで見たことがない、等身大のSKE48メンバーの様子が映しだされていたからだ。

 

稽古場の出入り口横らしき狭いスペースで、1時間にわたって一人のメンバーと話す。

 

メンバーの子供の頃の話や、SKEに入った動機、SKEに入ってからの話や、将来のことを話す。

 

ただそれだけの動画であったが、ここで松村香織の絶妙なポジションが幸いした。

 

というのも松村はSKEがまだマイナーだった頃に入った3期生で、1期生や2期生とは、売れない時間を共有していた。

 

そして正規メンバーに昇格できずにずっと研究生だったおかげで、後輩全員と研究生公演で同じ舞台にも立っていた。

 

すなわち彼女はSKEメンバーのほぼ全員と時間を共有しており、SKE48のメンバーの素顔を引き出すのに絶好の人材だったのだ。

 

そのため動画に登場する殆どのメンバーは、話す時間もたっぷりあったこともあって、緊張することなく自分のことを話し、それがそのままファンへのアピールとなった。

 

この動画が毎週「ぐぐたす」にアップされるやいなや、「ぐぐたす」で何度も転載されたり、ネット上の掲示板でも内容が取り上げられ、SKEメンバー一人一人について、ファンはより深く知るようになったのだ。

 

そして登場したメンバーに興味を持ち、個別握手会に申し込むファンも増えたから、メンバーも順番が回ってくるのを心待ちにし始めたし、他の姉妹グループからも、松村の動画に映り込もうとするメンバーが増えた。

 

松村はそうしてファンに、バズを発生させる様々な話題を提供し続け、SKE48の注目のメンバーとなった。

 

そして2012年のAKB選抜総選挙では34位、翌2013年には24位に選ばれ、松村香織は徐々に48グループに欠かせないメンバーになり、「終身名誉研究生」という称号を得て、研究生の身分ながら、様々な重要イベントに呼ばれるようになっていった。

 

NEXT:松村香織が情報を発信し続ける理由


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