話すべきことがたくさんある/話すと利益がある
「バズ」とは商品やサービスについてのおしゃべりやコメントのことを言う。
バズは元々「ハチのブンブン言う音」であり、それが転じて「ガヤガヤ」や「うわさ話」などの意味に使われている。
ではなぜバズが発生するのかというと、「クチコミはこうしてつくられる」という本には、6つの理由が挙げられている。
まず1つ目は、人間は群れで暮らす生き物で、エサを見つけたり危険を感じたら、すぐに仲間に知らせる本能があるのだという。
つまり人間はおしゃべりするように、DNAに書き込まれているというわけだ。
2つ目は、ツナガリを保つために何もなくても集まって情報交換をし、会話し続けるということらしい。
「本能だから」と「関係の維持のため」ってことだ。
そしてバズが発生する理由の3つ目は、「話すべきことがたくさんあるから」だという。
現代は情報過多の時代で、毎日毎日新しい情報が生み出される。
テレビやラジオでは毎日新しいニュースが流されるし、毎日のように新しい雑誌がコンビニに並ぶ。
ネット上でも世の中の出来事に対して、様々な意見が飛び交い、掲示板がにぎわう。
なので毎日新しいバズが発生し続けるというわけだ。
また「人に話すことによって、何らかの利益がある」場合にも、バズが発生するという。
これが第4の理由だたとえばサッカーチームを組みたいとき、その人はサッカーの面白さを語るだろう。
ロックバンドを組みたいとき、その人はロックバンドの良さを語るだろう。
対戦型ゲームをやりたければ、そのゲームソフトの面白さを語るだろう。
こういう風に語ることによって何らかの恩恵がある時、人はバズを発生させる。
競争相手の悪口を言って、自分の方に相手を引き寄せようとするのも同様だ。
失敗したくない/不安を和らげるために話す
バズが発生する第5の原因は、「リスク回避・不確実性回避」だ。
人間は失敗することを恐れる。
そうして失敗しないように振る舞う。
失敗しても大したことがないことは、世間の評判など全く気にしなくてもいいが、失敗すると後々面倒なことは、情報を集める。
新しく医者を探すとき、70%もの人が、隣人や周囲の知人に尋ねて情報を集めるのは、変な医者にあたると困るからだろう。
そして「不安を和らげるために話す」というのが最後の原因だ。
何か不安がある場合、それを人に話すことで、不安感を和らげることができる。
たとえば自分が買った商品が、いかに良いものかを語る人がいる。
これは自分が失敗しているんじゃないかと不安になって、それを打ち消すために語っている。
不安は放っておくと、頭の中をぐるぐる回ってさらに別の不安な感情を引き出してしまうので、自分のやったことを言葉にして肯定してみるわけである。
こういう場合は、バズとしてはあまり広まらない。
というのもあくまで購入者本人が納得するかどうかだから。
ところがちょっとしたイライラを解消するために、有名人や企業やお店に難癖をつけたり、それをネット上でつぶやいたりする人もいる。
こういう行動はネガティブなものであるが、それに便乗して来る人間もいるので、バズが発生する。
このバズにさらに別のネガティブな情報が重なると、実際に起こっていないことまで付け加えられてリアリティを持ち始める。
そうしてこの悪いバズは、人々の間にどんどん広まっていくのだ。
たとえばテレビに良く出ている某有名イタリアン・シェフの店は、「水だけで800円も料金を取る(取っていた)」と伝わると、「あそこの店員は愛想が悪かった」「店員がチャラい」という情報や「食べ物も怪しいよな」「頼んでないモノまで会計に入っていた」など様々な尾ひれがついて「ぼったくり店」のイメージが広まっていく。
こういう悪いバズは、リスク回避の心理と相まって、あっという間に広がっていくから非常にやっかいだ。
しかしこんな風にあっという間に世間に広まるバズは少ない。
というのも普通のバズは、狭い地域でしか広まらないモノだからだ。
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