情報発信者 メイヴンとは
クラスター内で発生したバズ(うわさ)は、別のクラスターには、なかなか伝わらない。
というのもクラスターが異なる集団では、バズを説明するための前提知識が、ほとんど共有されていないからである。
たとえば「SKE48の松村香織が…」と言えば、SKEファンやAKBファンには話が通じるが、これらのクラスターにいない人には「SKE48ってなに?」「松村香織って誰?」となり、まずそこから説明しなくてはいけなくなる。
だからどこかのクラスターで何かのバズが発生しても、それが他のクラスターまで広まるとは限らない。
面白い話や、興味深い話など、関心を引く内容を含んだバズでないと広まらないし、また、誰が語るか、どこで語るかによっても広がり方は変わってくる。
となるとヒット商品のバズは、どういう風に広まっていくのだろうか。
そこでバズの広がり方を理解するために、情報伝達者にそれぞれ名前をつけることにする。
まず、情報の発信者は「メイヴン」だ。
メイヴン(maven)は「~通の人」という意味のアメリカ英語で、たとえば She is a coffee maven. (彼女は珈琲通だ)という風に使う。
メイヴンは専門家や事情通やマニアであるが、人に伝えるために情報を集めたり、情報を分析するところに特徴がある。
彼らは「自分が集めた情報を他人にも知らせることが好き」でさらに「それが人の役に立ったことを知るとさらに喜ぶ」のだという。
自分が関心を持っている得意ジャンルの情報を求め、それを他人に伝えることを趣味にしていると考えると良い。
「この分野の情報なら、あの人の言うことを聞いていれば間違いない」こういう存在がメイヴンである。
バズはメイヴンが生み出し、バズ・ハブが広める
自分の知識や集めた情報を他人のために発信する人をメイヴン(事情通)と呼ぶ。
メイヴンは自分の持っている情報が他人の役に立つことを喜ぶタイプで、そのために様々な知識を集め、玄人さながらの分析も行う。
そしてメイヴンはユーザー目線で発言するので、商品やサービスを販売する企業には、貴重なヒントも提供してくれる存在だ。
たとえそれがクレームであったとしても、企業にとって役立つ情報だと思って言っているので、彼らを味方につけるか敵にするかで、評判も変わってくる。
なのでコンピュータやIT関係の企業などでは、新商品の開発の早いうちから情報を流し、発売の半年以上前にはベータ版(販売候補版)を無料公開して、彼らによるテストや指摘を製品にフィードバックするのが当たり前になっている。
彼らは熱心な情報発信者であり、是非とも味方につけないといけない人間だからだ。
そしてメイヴンが発信した情報を、周囲の人に伝えるのが、バズ・ハブ(buzz hubs/ハブ)と呼ばれるタイプの人だ。
バズ・ハブとは、クラスター内に知り合いが多く、情報の中継点になっている人のことを指す。
メイヴンは特定の情報に詳しい存在だが、ハブになる人は、クラスター内の人間について詳しい人だ。
イメージとしては、町内会の世話人だとか仲人だとか、人と人をつなぐことに長けている人々である。
そしてバズは、メイヴンから発信され、それがバズ・ハブを通ってクラスター内に広がっていくと考えれば良い。
NEXT:情報の運び人 バズ・ハブとコネクター