本屋大賞は、バズを生みやすい仕組み

本屋大賞とは、読書好きの書店員が、お客さんに薦めたい本を選ぶイベントだ。

 

全国書店員が選んだいちばん売りたい本」というキャッチフレーズが示すように、毎日、書店で本を売る書店員たちが、お客さんに薦めたい本をみんなで選ぶ。

 

方法としてはまず、全国の書店員にお薦めの新刊書を3冊選んでもらい、集計して票数の多かった上位10冊の本をノミネート作として選び出す。

 

大賞を決める二次投票ができるのは、10冊の候補作を全部読んだ書店員のみで、投票したい書店員はノミネート10作品を全部読み、3作品に順位と推薦コメントをつけなければならない。

 

投票は3位まで投票することができて、1位3点、2位2点、3位1.5点という風に点数をつけ、集計した結果でランキングが決まり、1位が大賞になる。

 

10冊を全部読むというのはなかなか大変な話だが、そういう高いハードルがあるからこそ、結果に信頼性が生まれる仕組みだな。

 

本屋大賞では、本が好きな人が薦めるだけあって、読み手側が納得できる本が選ばれる

 

本屋大賞の上位入賞作は、ドラマ化されたり映画化されたりすることが多いが、それだけ読者の心を動かす本が選ばれていると言うことだろう。

 

そして「推薦コメント」があることで、その本がどのような人に向いているか、あるいは、どういう話が好きな人にお薦めなのか、他人に伝えるための言葉ができる。

 

バズというのは言葉であり、言葉で伝わるので、伝わる言葉がそこでたくさん生まれるというわけだ

 



業界内のバズ 顧客のバズ

バズには「業界内のバズ」と「顧客のバズ」の2種類がある。

 

業界内のバズというのは、企業や組織目線のバズで、将来に関する話題が多い

 

たとえばどこかの企業が画期的な商品を出すぞとか、どこかの企業が買収されるらしいぞというような、これから将来起こる可能性が高いことを話題にする。

 

一方、顧客のバズは、ユーザー目線のバスであり、将来ではなく過去の事について話題にすることが多い

 

「これは良い買い物だった」「これは失敗した」などと、過去の話とその評価について語られるのが普通だ。

 

本屋大賞で生み出される様々なバズは、関係者からであるから業界内のバズであるが、発売後の本について語っているので顧客のバズでもあるところが面白い。

 

書店では、この顧客のバズを十数年前から積極的に取り入れている。

 

つまり他人に薦めたい本が見つかったとき、それを知り合いに薦めるのが「顧客のバズ」だが、書店ではそれを手書きのPOP(ポップ;ピーオーピー)にして使っていたのだ。

 

POPとは、スーパーなどで陳列している商品のところに張ってある、販促用の紙で、「本日特価、990円!」みたいなやつである。

 

それを書店では、平積みにされている本などに、「店長一推し!」「実話を元にした泣けるファンタジー」「春から社会人になる人にお勧め」などと、小さな厚紙に書いて添え、販促に使っている。

 

おそらく本屋大賞でノミネートされる本というのは、店先で必ずPOPが付くような作品なんだろうが、そういう読者目線のPOPを集めて業界内のバズを作り、それを今度は世間一般の人に広めようというのが本屋大賞の基本的な仕組みだね

 

個々の書店員のバズ→集めて業界のバズ→大賞発表で世間のバズ
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